よくいただく質問/カミングアウトする理由

研修などで、カミングアウトの理由について質問を受けることが多くあります。
いろいろな質問の仕方がありますが、大きく2つに分けられます。
1つ目は「LGBTQの人がカミングアウトしたいと思う理由は何ですか。」2つ目は、「LGBTQの人は何で(そんなに)カミングアウトしたがるのですか。」似た質問ですが、ニュアンスが異なる事が分かるかと思います。
前者はカミングアウトしたいと思う背景や心理を聞いている感じです。一方後者は、カミングアウトすることが理解できないといった、やや批判的なニュアンスを感じさせます。実際に、後者の質問に「自分はいちいち女好きとは言わないのに・・」と付け加えられたことがあります。
今回は、後者の質問に対し、私がどのように答えているか書いていきます。

1.すべてのLGBTQの方がカミングアウトしたいと考えているわけではない

まず前提として、すべてのLGBTQの方がカミングアウトしたいと思っているわけではないということをお話ししています。もちろん個々の考え方は千差万別ですが、積極的にカミングアウトしたいと考えている人は少なく、寧ろ他者に知られないように気をつけている人の方が多いのではないでしょうか。
カミングアウトする気は無い、カミングアウトしたい気持ちはあるができる環境や状況にない、カミングアウトする対象やタイミングを計っている、などいろいろだと考えられます。

2.自分の大切な人を隠す生活を想像してもらう

次に、自分の大切な人を隠して生きなければならないことを想像してみるよう促しています。
大切な人とは、例えば、恋人、配偶者、お子さん、兄弟、両親などです。実際はいるのに事情があっていないことにしなければならない、そのような生活を想像してみるのです。『先日の休みは恋人と旅行に出かけた。しかし、恋人の存在は隠している。そんな中、職場の同僚との雑談で旅行の話になった。しかし、恋人と言ったことは話せない。したがって、友人や家族と行ったことにした。結局、嘘をつくことになった。』こんな感じです。このようなことが、一時的ではなく、真実を打ち明けるまでずっと続くのです。

これは、カミングアウトしていないLGBTQの人の状況を疑似体験してもらうために行っています。例えば、私はゲイですが、同性のパートナーがいたとしても、いなことにするか異性に置き換えて話をしなければなりません。パートナーの話に限らず、周囲の人は私が異性愛者だという前提で接してきます。ですから、私は異性愛者の”ふり”を続けなければなりません。一つ一つのエピソードは些細なことでも、これが続くと精神的に堪えてくるのです。このことに気づいてもらうために、先ほどのような想像を巡らしてもらっています。

3.「いちいち女好きとは言わないのに・・」という方には

「自分はいちいち女好きとは言わないのに、なぜLGBTQの人はカミングアウトしたがるのか」という質問の仕方をする方には、「そりゃそうでしょう。」とお話ししています。なぜなら、その質問者がシスジェンダー・ヘテロセクシュアル(シスヘテロ※)であるならば、ご自身も含め周囲の人たちもシスヘテロであるという暗黙の了解の元に会話が成立しているからです。ですから、いちいち女好きだとことわる必要はありません。
また、このような質問の仕方をする方は、性的指向を嗜好と勘違いをしている可能性があります。自分の性に関する趣味嗜好を話すなんて、LGBTQの人たちって恥ずかしくないのかな?と思っていたのかも知れません。
あるいは、カミングアウトされた際にどのように対応して良いかわからなく困った経験がある方、理解を求められることに拒否反応がある方という場合もあります。

このような質問を一通り研修や講演が終わった後にいただくと、私としては自分の力不足を感じざるを得ません。なぜなら、性的指向はもちろん、LGBTQの心理についてはお話ししているからです。これらを理解していただければ、このような質問をいただくことはあまりないと思っています。
しかし、1回の話だけで理解していただこうと欲張っている私の方が間違っているのかも知れません。LGBTQの方々にとって、カミングアウトは重要でセンシティブな問題です。私自身より理解を深め、丁寧に説明する必要があると感じています。

※シスジェンダーとは、性自認と生まれたときに割り当てられた性別が一致している人のことです。ヘテロセクシュアルとは、異性愛者のことです。両方を合わせて、シスヘテロと省略する場合があります。

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