「性自認」の話

令和5年6月23日に、LGBT理解増進法が施行されました。正式名称は「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解増進に関する法律」です。長いですね・・。
ご存じの方もいると思いますが、性的指向とセットで用いられる言葉に「性自認」という用語があります。しかし、本法律では日本語の性自認ではなく、わざわざ英語のジェンダーアイデンティティはという言葉が用いられています。それは、なぜなのか。そして、そもそも「性自認」とは何なのか。この記事では考えていきます。

1.「性自認」とは

「性自認」とは、自分で自分の性(性別)をどのように捉えているのか、と説明されることが多いです。ポイントは2つあります。
1つは「自分で」という点です。他人がどう言おうと、戸籍上の性別はどうであろうと、自分自身はどう捉えているのか、という点が重要です。もう1点は、持続的な自己認識(アイデンティティ)であることです。例えば「今日はなんだか女性になった気がする」いうのは性自認に含まれません。自分が周囲からどのような性(性別)として接してほしいのか、また、自分がその性(性別)に属していることに違和感を持たないのか、という点がポイントになります。

このように考えると、LGBT理解増進法においても「性自認」という言葉を用いても問題ないように思うのですが、実際は「ジェンダーアイデンティティ」が使われています。その理由について、次に考えていきます。

2.「ジェンダーアイデンティティ」が用いられた理由

LGBT理解増進法の審議過程において各党が法案を提出しましたが、「性自認」「性同一性」「ジェンダーアイデンティティ」の3種類があったようです。しかし、これらは同じ意味です。ジェンダーアイデンティティの日本語訳が性自認と性同一性だからです。にもかかわらず使い分けされた理由は次の通りです。

①「性自認」については字面だけを見ると、勝手な主張が認められる、との不安がある。
②「性同一性」については(性同一性障害など)”障害”という言葉に結びつく不安がある。
③「性自認」を使うか「性同一性」を使うかで、政治的な対立となっている。「ジェンダーアイデンティティ」と敢えて日本語に訳さないことで、対立を避けられる。

①と②については分からないではないですが、この記事で説明したように「性自認」とは「自称」ではないのです。このことを広く理解してもらうことの方が、政治的対立を避けるよりもはるかに重要であると私は考えるのですが、いかがでしょうか。
また、「性自認」とはLGBTの方々だけに当てはまるものではありません。(性自認の感じ方に対する強弱はあるものの)全ての人に当てはまるものです。理解を増進するのならば、この2点こそ理解していただきたいです。そうすることで「自称女性が女湯に潜入」といったことも防げるのではないでしょうか。

※この記事は、「第2回石川県性的指向及び性同一性の多様性に関する県民の理解に関する条例(仮称)及び石川県パートナーシップ宣誓制度(仮称)検討に係る有識者会議」の資料を参考にさせていただきました。

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